前夜祭

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逃げるように音楽室に戻った。 バイオリン2で、パート練習をして、みーたんと一緒にお昼休憩にした。 音楽室の端っこに陣取って、お弁当を広げながら、みーたんの様子を伺った。 「ねえ、みーたん。みーたん、永井くんのどこが好き?」 「っえ?んっ。 何を急に!」 おにぎりでむせそうになっている。 みーたんは、一年の時から、ずっとみーたんと同じクラスの永井くんと付き合っている。バスケ部の人だ。 「どこって。色々だよ」 はずかしそうに笑うから、うまく行っているんだろう。 「うん。でも、どういう感じで好き?」 「はあ? なに? 柚、なんか悩んじゃってる?」 「んー、みんな、どういう感じなんかなぁと思って」 人は人。私は私。 みんなと一緒、っていうよりは、そっち派だったつもりだけど、もう藁にもすがる思いになってきた。 恋ってなんだろうか。 「んー、私は、零士といると、楽しいし、落ち着くかなぁ」 「ドキドキしないの?」 「す、するわ! それは。そういう時は。あ、でも、結構落ち着いてるか。一緒に帰る位は平気だわ、最近。あ、嫌だ、落ち着いてる!」 そうだよね。 ドキドキは、する時はするわ。 彼氏だもんね。 私、先輩にドキドキするのに、最近、龍之介にもドキドキする。 非常識な女になっちゃった。 フラフラしてて、チャラチャラしてる。バカにしてた人になっちゃった。
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