前夜祭

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みーたんがちらっと音楽室を確認して、声を落とした。 「柚ちゃん、言わないの?」 「んー。言ってもしょうがない」 好きだから、知ってる。 先輩が他の誰かを見てるんじゃないかって。 私に優しくしてくれたって、後輩だからで、女の子として見てるわけじゃないだろう。 女の子として私は、あんまりに残念なとこが多い。 性格も。 身体も。 「でもさ、分かんないよ。可能性はあるじゃん。好きって言われて、悪い気する人、いないって」 「いるよ、気まずいって思うじゃん。最悪、キモいとか」 そんな風に思われたら、最悪だ。 「そんな事、思わないと思うけど、あの人」 他の人に分からないように、先輩をあの人、と呼んでくれる。 「ん。そうだよね」 安藤先輩、良い人だし。 良い人。 その言葉で、急に嫌な事を思い出した。
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