前夜祭

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帰り道、スーパーに寄ってお惣菜を買って家に帰る。 着替えて、炊飯器をセットしていたら、母が帰ってきた。 「あら、前夜祭じゃないの、今日?」 カバンをソファの隣に下ろすと、思い出したらしく聞いてきた。 「んー、疲れて帰って来た」 「文化祭、これからなのに疲れてるの?」 呆れたように笑われた。 「そう。リハ、2つやった。お母さんこそ、金曜じゃん。デートすればいい」 「デエトって。たまに、誘われたら、ご飯行くだけじゃない。誘われなかったら、金曜だろうが真っ直ぐ帰って来ます」 オフィス用の仕事着から、Tシャツと緩いスカートに着替えている。 家モード。 紹介されない母のデエトの相手が、既婚者何ではないか?と思った事を思い出した。 そうだとすると、その人は二股している。 そんなんで母は、いいんだろうか。 「お母さん、さぁ。その人、不倫とかじゃないよね?」 「ええ? 違います!」 「あっ、そう」 有り得ないっていう、素早い返事だった。 有り得ない、かな。 一度に二人の事、気になるとか。 「何、言ってるの。たまにご飯に行くの、会社の独身の人だよ。バツイチだけど」 変な事聞く子だわー、と笑って、お味噌汁を作っている。 「好きな人に、他の女がいるなんて、ろくな事じゃないわよ。お母さん、そんな図強い神経持ってないわ」 「好きなら、他に相手がいたって好きじゃない?」 「まぁ、そうかもだけど。結局、苦しくって、どうかなるわよ」 ちらっと私を見るとネギを切っていた手を止めた。
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