文化祭

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文化祭

文化祭の一日目の土曜日、朝練と同じ時間に家をでる。 開会式の前にオケ部の朝練に出るつもりでいる。 土曜で電車も空いていた。 座席に浅く腰掛けると、なんとなく龍之介にメッセージを送った。 普通なら、あんなスピーチを読むのは、緊張しているとおもうから。 龍之介は、ふらふらしているようで、肝が据わっていて、こういう時に緊張するのかわからないけど。 『おはよう。今日、がんばってね』 こんなメッセージで応援になるか分からないけど、応援しているのは、伝えたかった。 昨日の夜、いくら一人で色々考えても駄目だとあきらめた。 そういう事を、全部、一旦、脇に寄せて、このスピーチをする龍之介を応援したかった。 龍之介は、私にできないことをしている。 自分の人生の傷をさらけ出すスピーチ。 それは、ただただ、すごい。
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