文化祭

5/32
前へ
/177ページ
次へ
すこし首をかしげて、じっとこっちを見つめている。 え? 泣いたこと? 早く告って来いって言った事? 「私に、ささっと振られろって言ったやつ?」 他の人が周りにいない事を確認して、声を落として聞いた。 「ん、それ」 「考えた。けど、むずかしい」 昨日、ずっとモヤモヤして、今は、とにかくスピーチコンテストとオケ部の発表に集中しようと決めて考えるのを止めた。 「俺、これ、できる限り、ちゃんとやるから。そしたら、柚、今日中にちゃんとしろ」 今日中? ちゃんと? ここしばらく、ちょっと混乱していて、一旦保留にしたのに。 「なにそれ。いきなり、勝手」 「いきなりじゃねえ。俺は気が長かった。さっさと気づけよ、色々」 気が長いっていう割に、少しキレてる? 「色々?」 「ああ? お前、昨日、俺が一年としゃべってただけで泣いてるくせに、あいつには彼女がいたから告白できなかった、受験があるから告白できないって、どういう神経してんの?」 少し、悲しそうに言われた言葉が刺さって心臓が痛くなる。 どういう神経? ……言い訳している、酷い人の神経? なんにも返事ができずにいると、体育館で席に着くように促すアナウンスが入った。 「まぁ、いいわ。まず、これ、やるから。ちゃんと聞いてろよ」 「わかった」 ぐしゃぐしゃと私の髪の毛を乱して、体育館の椅子に向かっていく龍之介の後について、自分の席に着いた。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加