文化祭

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 開会式で生徒会長や校長先生の挨拶の後に、そのまますぐに高須さんが挨拶して、スピーチコンテストが始まった。 一年生から発表が進み、二年の順番が来たのを合図に、私は係員席へ移動した。 龍が立ち上がって、壇上の前へ進む。 それに合わせて、私は係員席に立って、分数カードを手にして、深呼吸した。 龍之介。 大丈夫。 大丈夫。 大丈夫。 聞いてるよ。 拓くんも。 私も。 「命なんて、壮大なテーマで、何を書いていいのかわからなかったので、僕の友達の話をします。幼馴染のA君は、少年野球のピッチャーで…… 6年前、小学校5年でA君は、なくなりました。 夏の水難事故でした。 …… 一瞬で、僕の目の前からいなくなって、二度と戻ってきませんでした。 ……僕は、亡くなった親友の分、立派に精一杯生きて、勉強して、いい大学に行って、医者になるとか、弁護士になるとか、人のために何かするとか、そういうことは約束しません。 できないから。 僕の大体の将来の展望は、ブラック企業の窓際でパソコン打って、コンビニの飯だけ食べて生活しているとか、ベルトコンベヤーの前で同じことをずっと繰り返しているとか、借金してやばいことになっているとか、どっかの道端で土下座しているとか、そういう人生の方の気がします。」 ステージに立った龍之介は、そこまで流暢に、いつものペースで読んでいった。 いつものペース過ぎて、いつも持ち時間が余るから、もうちょっと間を入れてもいい。 そう思って聞いていたら、龍之介がちょっと顔を上げて、私の方を見た。
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