文化祭

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スピーチコンテストの最後、ステージから降りてきた龍之介に「よかったよ」とだけ伝えた。 もっとちゃんと感想は伝えないといけないと思うのに、きちんと顔が見れない。 まともなことを言えないうちに、龍之介は他の子に囲まれていた。 「ん。柚、後で」 そう言った龍之介を残して、図書委員の片付けを率先して手伝いに行った。 私は、アドリブ部分に動揺してしまっているけど、龍之介は堂々として、立派だった。 すごくよかった。 拓君は聞いて、どう思っただろか。 ちらっと龍之介の方を見ると、C組の方へ行って、知らない男子に声をかけているとこだったから、あれが拓くんなのだろう。 スピーチコンテストが終わると、各部活での発表は、自由参加になる。それぞれ、発表の準備や見学にバラける。 図書委員の片付けが終わると、私はそのまま音楽室に向かった。 龍之介の好きな子。 あれは、私でいいんだろう。 どうしていいのか、わからないほど、心が震えた。 ―― 他の奴を見ている。 そんな私。
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