文化祭

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今朝、龍之介に言われた言葉が、耳に残っている。 『俺が一年としゃべってただけで泣いてるくせに、……どういう神経?』 神経? 神経という言葉で、昨夜の母の言葉が、急になんとなく思い出されてきた。 『そんな図太い神経持ってないわよ』 好きな人に、他の女の人がいたら、苦しくてやっていけない、という母の言葉。 そりゃ、安藤先輩が細川先輩を好きそうなのを見るのは、苦しいけど。 心が少し、ざわつく程度に? 一年の時、先輩に憧れて、恋して、でも後輩でしかなくって、先輩に彼女ができたと聞いて……別れたってきいて……。 その間に徐々に、ゆっくりほどけて、崩れていっていた気持ちが、零れ落ちた。 もうずっと前から、諦めがついていて、あんなに好きだと思っていたのに、もう、それほどに、恋してなかったのかも……。 それでも、恋していた気でいたのは、私とって安藤先輩が、片思いに丁度いい、観賞用の男だから。 恋をしても、どうこうする自信のない、片思い専門の私に丁度よかったからかもしれない。
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