文化祭

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細川先輩が集まって来たバイオリン1パートの子に話しかけに行くと、みーたんがこっちを伺って、首をかしげて笑った。 「あれ、柚、なんか昨日と雰囲気、違う。どうした? 良いことあった?」 「いや、今さっき、ちょっとスッキリした気がした」 「え? 何が?」 徐々に集まってくる部員の目もあるから、あんまりに具体的におしゃべりしていられない。 「みーたん様のアドバイスが、すごく役に立った。なんか、閃いた」 そうふざけて誤魔化して、安藤先輩を見た。 「だから、何がぁ?」 みーたんが不服そうに口を尖らせている。 チェロを調弦する安藤先輩はかっこいい。 相変わらず、不動にかっこいい。 でも私は、今、この人が他の子に笑いかけても、泣かない。
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