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発表会前の緊張感に胃が痛くなる。
文化祭だという高揚感がどうにか、プラスの緊張感に持っていっている。
吹奏楽とか、本気のオケ部みたいにコンクール出場するような部活じゃなくて良かった。
パンパンと手を叩いて、安藤先輩がセンターに立った。
「はい! そろそろ開けるんで、注目!」
指揮台に立って、皆を見渡す。
「いよいよです。こないだのリハ通りやってもらったら、いいんですけど、三年生にとっては最後だし、最高のパフォーマンスを見せたいと思います」
最後の演奏。
緊張感に拍車がかかる。
ぴりっとしたと思ったら、安藤先輩がふっと笑った。
「ま、みんな緊張してるし、ハズす事もありえるかと思います。そこは、まぁ、楽しんで」
はははっと笑いが起きた。
ありえるもん。うん。
「はい、うん。とにかく楽しんで、最後、一緒に、弾きましょう! じゃ、開けます」
そう言って、指揮台を降りると、体育館の入口を開けた。
入ってくるお客さんに、入口の係の一年生がプログラムを渡していく。
生徒や、保護者で席が少しずつ埋まって、いく。スピーチコンテスト後のプログラムは一般公開されているので、他校の生徒や中学生も来ている。
母も一人で見に来ていた。
プログラムを受け取って、右側の後ろの方に座った。
軽く手を振る。
去年も見に来ていた。
普段、あれこれ学校の事に口を出さないけれど、この発表会だけは見に来てくれる。
ああ、本番が始まる。
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