文化祭

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「あの、先輩、ちょっと良いですか?」 次々と安藤先輩に声をかける後輩の順番を見計らって、私も声をかけた。 「柚ちゃん。いいよー。お疲れ様」 チェロを拭きながら、顔をこっちに向けてくれる。 「えっと」 何から言ったら良いのか、この場でどこまで言っていいのか分からない。 お手間を取らせずに、さっと、この場で軽く話してしまうつもりが、やっぱり緊張して、人の目が気になってしまう。 「あ。準備室行く? うるさいね、ここ」 先輩は気を利かせて、小さい声でそう言うと、机の上に置いてあった今日の残ったプログラムを私に渡した。 「柚ちゃん、これ、ちょっとお願いできる?」 少しハッキリそう言うと、自分は手元にあったファイルを持った。 「はい」 先輩について、準備室へプログラムを持って入った。 先輩、案外、こういうの手慣れてる。 先輩の後について歩きながら、なんか、ちょっと笑えた。 モテるんだな、やっぱり。
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