文化祭

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ファイルを「オーケストラ部」と書いた棚に置くと、私の持ったプログラムも受け取ってバサッと棚に置いた。 「はい、ありがとう、柚ちゃん」 優しく笑っている。 ここは、私が切り出さないといけない。 私が言おうと決めたんだから。 「あの。今日で、先輩と部活最後なんで、ちゃんと言っておきたくて」 「うん?」 「えっと。……ずっと先輩のチェロが大好きでした。先輩もすごく好きでした。おかげで、本当に部活が楽しかったです。ありがとうございました」 「お。過去形。 ……ありがとう、で、いいのかな?」 先輩が困ったように少し笑った。 「ふふふ。はい。それか、どういたしまして、とかで、オッケーです。ちょっとけじめに先輩にお礼を言っておきたかったので」 ははは。 先輩が大好きだった。 それは消えない。 「はい。柚ちゃん、ありがとう。どういたしまして」 優しく先輩が笑って軽くお辞儀した。
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