文化祭

22/32
前へ
/177ページ
次へ
「じゃ、先輩。色々、頑張ってください」 「あ、えー? もう受験の話?」 ちょっと気まずい雰囲気を消すように、先輩が眉をひそめて嫌そうに笑って答えた。 「んー、受験も、細川先輩も、です」 「え?うっわ、何? バレてんの? 俺、そんな分かりやすい?」 ふざけて言ってみたら、思ったより動揺した。 「あはは、当たりだ。伊達に先輩の事見てませんでしたよ」 「はっず。ははは。んー、部活も終わったし、まぁ、色々、頑張ってみます」 うん。 良かった。 「柚ちゃん、龍之介君、今日のスピーチ、良かったね」 そういうと、私を見て、くすっと笑った。 あ、これは、仕返しなんだろう。 「はい。案外、落ち着いてて、余裕でしたね」 普段、人前に立つことの無いやつなのに。 本当に余裕で、落ち着いてて、いつものヘラヘラ具合と大違いだった。 「うん。なんか途中、アドリブ入れてなかった? 」 「分かりました?」 「うん。急に原稿読まないで、視線、ぴったり定まってたから、あれっと思って。……あのさ、俺、まぁ、好きな奴いるし、ちょっと違うけど、柚ちゃん、かわいいなと思ってたから。柚ちゃんも頑張って、ね」 ふわっと笑った。 変な告白して、嫌だとか、キモいとか思われてなくって、嬉しかった。 「ハイ」 しっかり頭を下げてお礼を言って、準備室を出た。 1年ちょっとの片想い、終わる。 終わってたのかもしれないけど、けじめがついた気がする。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1106人が本棚に入れています
本棚に追加