文化祭

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マネージャーさんと一緒にいる時に話しかける気もしなくって、帰ろうと回れ右をして、こっちに歩いて来ていた男の人にぶつかりそうになった。 「あ、すみません」 「おお、えっと、柚ちゃん」 名前を言われて、顔を上げたら、サッカー部の美馬さんだった。 「あ、はい」 「オケ部、お疲れ。ペナルティーシュートしてく? 当たると、豪華景品。外しても、飴ちゃん、あげるよ」 そう言って笑って、パネルの方を指すけど、どう見ても近所の小中学校の男の子のたまり場になっている。 「いえ、良いですー」 「そう? 面白いよ。っていうか、ぜひサッカー部に一票入れて欲しいんだけども」 ハハっと笑っている。 どこの部も出来たら投票に勝って、部費が欲しいもんな。 「ははは、入れますよ、美馬さんがオケ部に一票、入れてくれたら」 取り引きを申し出たら、困ったな、と笑った。美馬さん、色んな人に投票してって、言われてそうだもんな。 「柚!」 名前を呼ばれて振り返ると、龍之介が小走りに向こうからこっちにやって来るとこだった。 「あー、柚ちゃん、龍之介、探してたの?」 「はい、でも忙しそうだったんで、後でいいやと思って」 忙しそう、っていうかおしゃべり中だったんだけども。 美馬さんが私がここにいた理由を納得したというように軽く頷いた。 「龍之介、今日はもう良いわ。柚ちゃん来たし。どうせ、ろくに役に立ってないんだろ?」 近づいてくる龍之介に、美馬さんがからかうように、叱った。 「いや、役には立ってましたよ。中学生いっぱい集めたんで、一瞬、休憩してましたけど」 一瞬? ずーっと喋ってた風に見えたけど。
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