文化祭

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「柚!」 龍之介が名前を呼ぶのを無視して歩き出した。 一日、色々あって疲れてて、心も頭もぐちゃぐちゃだ。 龍之介とちゃんと話をしてから帰ろうと思ってたけど、もう良いや。 渡り廊下に向かって行くと追いかけて来た龍之介に腕を掴まれた。 「柚、待って」 まだ周りには、一般客も、生徒も多い。 ちらっと私が周りを気にしたら、龍之介が、一旦腕を放して、こっち、と体育館の脇へ歩いて行く。 人目につかない体育館脇まで行くと、こっちを振り返った。 「柚、話、あんでしょ?」 「ない」 ムカついているから、龍之介に話なんかない。 「はあ? 柚。さっき、俺、探しに来たんでしょ? マジでさぁー」 なんで逆ギレ? 「そうだけど……」 「んで? オケ部の部長と話した?」 「した」 「で?」 「スッキリした」 振られたとか、付き合うとかじゃない。 過去形の告白だったんだもん。 「スッキリ? 俺、全然スッキリしてないけど」 納得いかないらしく、腕を組んで、聞いてくる。
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