文化祭

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「……だったら、龍之介、どうするの?」 今朝だって、「好きな子がいる」と言っただけだ。 多分、それが私だろうというだけで、それ以上言われていない。 別に付き合ってくれと、告白されたわけじゃない。 なのに誘導するのは、ずるい。 龍之介が腕組みを解いて、にっこり笑った。 「だったら、すげぇ、うれしいよ、俺は」 うっ うわ‼ 何!? 鳥肌立つかと思うくらい、きゅんとした。 駄目だ、なんかにやける。 恥ずかしい。 や、やばい。 血が上って、顔が赤くなるのがわかる。 はっず。 恥ずかしすぎて、後ろを向いた。 「柚?」 駄目だ。 なんかにやけちゃう。 顔を手で覆ったけど、あっつい。 龍之介が一歩近づいたのが気配で分かる。 「柚。隠れてんの?」 真後ろでくすっと笑う、その声にみぞおちがやられる。 「なあ? 俺、柚の後ろ姿に告るわけ?」 鳥肌立った。 「龍、ちょ、ちょっと待って」 呼吸が整うまで、待って。 はぁー。 どうしよう。 「んー、俺、もうずいぶん待ったから、それくらい、良いけどさ」
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