文化祭

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あぁ、もう。 私の根性なし。 息を思いっきり吐いて、吸って、ばっと一気に振り返った。 手が届く距離に龍之介が立っている。 軽く手をポケットにつっこんで、こっちを見ているようだった。 見上げないといけないのに、顔を上げられない。 「柚」 「はい」 顔を上げたら、こっちを見ている龍と目が合った。 少し照れたように笑うその瞳を見たら、これ以上ないくらいに、心臓が跳ねた。 「柚。好きなんだけど、俺と付き合って」 あぁ、もう。 ドキドキしすぎて胸の奥が痛い。 「う、ん」 なんとか答えると、龍之介が手を伸ばして、くしゃっと私の髪を荒らして、笑った。 「やった!」 小さい子みたいに笑うのがおかしくって、気恥ずかしくって、私もヘヘっと笑った。
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