片想いやら

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一年の時、一度、龍之介が先生を殴りそうになったのを見たことがある。 母の用事か、歯医者かなにかで、遅れて学校に行ったら、下駄箱前の廊下で体育の宮崎先生と龍之介が向き合って話していた。 なにか、怒られているのかな?と思った。 そこまでは、よくある光景だったから、見ないふりして上履きに履きかけていた。 一瞬、龍之介がなにか声を荒げたとおもって顔を向けたら、龍之介が宮崎先生の胸倉をつかんでいた。 そのまま宮崎先生になにか言われて、シャツを突き放すように離すと、隣のごみ箱を思いっきり蹴った。 プラスチックのごみ箱が廊下を飛んで、私は下駄箱の前で凍り付いた。 そのまま、下駄箱に来た龍之介は私にちらっと視線を向けたのに、私の「どしたの?」の問いかけに、何にも言わずに通りすぎて、帰ってしまった。 その頃、もう、私の事をしょっちゅう揶揄ったり、ふざけたりする仲だったのに、その時、私には「おはよう」も言わなかった。 クラスの中で特に仲がいいなんて思ったら、勘違い。 機嫌が悪かったら、簡単に無視されるらしい。 次の日、学校にきても、その時の事は一切言わなかった。 ただ、いつも通りに、何にもなかったように、へらへらしていた。 そういう人だ。
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