後夜祭

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「昨日、スピーチ、聞いてたでしょう? アレ、柚の事でしょ? 言われてみれば、まさに、だよ。一年のころからずっと柚の事、気にしてたのに、柚、本気にしないから」 揶揄われているとは、思っていたけど、本気で好意があったなんて、思わなかった。 だって、いつも、へらへらしてたし。 可愛いって言われたこともあるけど、その後すぐ、足が短くて、とか意地悪言ってたし。 頭を触ることも前からあったけど、髪の毛ぐちゃぐちゃにするだけだし。 「んー、そうかぁ」 「で、どういう気持ちの変化よ? 昨日のスピーチで、ぐっと来た? なんか、龍之介、ちゃんとしてて、びっくりだったよね? 急に、モテそう」 急にモテる。 そうなのかも。 前から、派手な子には、モテるし。 チャラチャラしてて、駄目だと思っていた子も、昨日のスピーチでイメージが変わっただろう。 私だって、このスピーチの一件がなかったら、はっきりと、気が付かなかったかもしれない。チャラいのに、何か分からないもの抱えた怖い人だと思ってたから。 「うん。きた。ここ一か月で、色々あったかんじ」 「それを、教えてって言ってるの!」 甘夏ちゃんの質問をやり過ごしていたら、甘夏ちゃんの携帯のアラームが鳴る。 「あああ。行かねば。着替えないと」 テニス部のカフェへ出動するらしい。 「うん。後で行くし」 バイバイして、一旦教室へ歩き出して、みーたんにも話すと言って、まだだったと気が付いた。 みーたんは、部長の事を「観賞用」と言い当てたくらいだから、それほど驚かないかもしれない。
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