後夜祭

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みーたんが、音楽室にいるか連絡して聞こうかと携帯を出して、やめた。 浮かれ過ぎちゃってる気がした。 代わりになんとなく図書館に向かった。 図書館は、昨日のスピーチコンテストの用具がそのまま置いてあるだけで、誰もいない。たまに文化祭の喧騒を逃れて、本を読んで時間つぶししている生徒がいることもあるけど、基本、静かだ。 甘夏ちゃんには、聞かれたから答えたけれど、昨日の今日で気持ちが浮ついていて、少し時間が欲しかった。 もし誰かが入ってきても人目につかない、図書館の奥のテーブルに腰かけて、携帯を出した。 別に携帯をチェックしたいわけじゃないけど、なにかしている風に。そして、誰もいないことを良いことに、テーブルに突っ伏して、冷たいテーブルにぺたっと頬をつけた。 ああ。 昨日まで、他の人を好きだって言ってて、別の彼氏ができた。 そういう言い方にすると、最悪だなぁ。 かっる。 浮かれてたけど。 本当に、龍之介、どうして私が好きだなんて思うんだろうか。 昨日、一年の時に、プール開きで気になったと言ってくれたけど、実際、本当にどれくらいの傷か見たこともないし、私が本当は、それに関して情けないくらい自信がないのも、知らない。 それに、そんなマイナスポイントを超えて好きになっちゃうほどの優しさも可愛げも持ち合わせてないんだけどな。 突っ伏したまま、本棚を斜めに眺めていたら、ガラっと図書館のドアが開いた。 目立って気づかれないように、ゆっくり体を起こした。 「あ、邪魔した?」
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