後夜祭

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「うん」 龍之介は特別だった。 多分、ずっと前から、特別。 手を出したら噛まれそうだったから、手を出さないでいただけ。 「そーだよね。柚ちゃん。なら、大丈夫じゃない? 」  ははっと笑って、パソコンをいじりだした。 「うん。そっか。なんか、ありがと」 気がつくと、携帯に『今どこ?』と、龍からメッセージが来ていた。 『図書館にいる』と送り返して、携帯をしまった。 「龍之介、来るの?」 新井君がパソコンから視線を外して、聞いた。 「うん、多分。お仕事、終わったみたい」 「ん、そう。あ、科学部の展示、結構良かったよ。幽霊の検証」 「なにそれ、こっわ! 面白そう」 新井くん、ちゃんと文化祭、見てるんだ。 なんか、良かった。安心した。 文化祭の展示について二人でおしゃべりしてたら、ガラッと図書室の引き戸のドアがあいて、龍之介が顔を出した。 「あ。龍、来た」 「んー。柚、行く?」 「うん。新井くん、ありがとね。また後で!」 なんかやっぱり元々、頭の良い人は違かった。話を聞いてもらって、なんだか少しスッキリした。 「ん。じゃあね」 かるーく手を上げて、もうパソコン画面を見ていた。 バイバイと手を振って、新井君を残して図書室を出た。
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