後夜祭

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「はーい」 黒い遮光のカーテンを二重に抜けると、教室内は真っ暗だった。 普通の教室がなんでこんな真っ暗にできるのか。剣道部のお家芸だ。 他のお客さんの小声やキャっという悲鳴が聞こえる。 「龍之介?」 すぐ前にいるはずの龍之介の背中すら見えなくなってしまう。 「ん?柚、こっち。行くよ」 声はする。 手を前に翳すと、龍之介のシャツに手がかすめた。 「掴んでて良い?」 「ん」 シャツの端っこを握る。 これで迷子にはならない。 ゆっくり歩き出す龍之介についていくと、奥にぼんやり光るエリアがあった。 「うっわ、あ、動画」 ちらっと見るとタブレット端末にお城が焼け落ちる映像が薄っすら流れている。誰だ、こんな映像加工までしてんの。泣き叫ぶ人の声とか、逃げ惑う足音とかまで流れている。 次の角まで行くと薄すら灯りの下に血だらけの刀が落ちている。 暗いだけだと言い聞かせて、通路を曲がると、「うっわ!」と龍之介が叫んだ。 嫌だ、こわ! 「何ぃ?」 「なんか触った!」 おおおお。嫌だ。
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