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「柚、飲み物、買おっか?」
ずっとキャーキャー言ってたせいで、喉が涸れた。
さっきから、龍之介はしっかりしている。
なんか、ちゃんと優しいし。
さっきも、ビビリすぎて鼻水出てるとか、シャツにリップ付くとか言いそうなのに、いつもと違う。
「うん」
一階の自販機のある階段下でジュースを買っていると、二階か、3階から降りて来るパタパタ足音と、女の子達の話し声が響いた。
D組の派手な子達っぽい。
会話の中に「龍之介」と聴こえて、びくっとした。
「……もう付き合ったっぽいよ」
「えー、誰と?」
「あの図書委員のちっさい子」
龍之介が会話に気がついて、顔を上げた。
この角にいれば気が付かず、通り過ぎて行くだろう。
「え?あの胸に火傷の跡、あるっていう子?」
あ。
言われた。
チッと龍之介が低く舌打ちした。
喧嘩を売りそうな勢いで階段を見ている。
「龍。いいから」
出ていかないように、腕を引っ張る。
「そう、そう。意外じゃない?」
「うっそ。まじで? 昨日のスピーチでさ……」
パタパタと降りて来た足音はおしゃべりしながら廊下に消えて行った。
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