後夜祭

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ほっと息をついて、龍之介を見上げたら、ちょっとむっとしているようだった。 「なんかごめん」 龍之介の友達っていうか、ファンの子って感じだろう。 別に龍之介が謝ることじゃない。 「いいよ。別に、悪口じゃないから。ただそういう特徴ってことでしょ」 図書委員とか、勉強ができるとか、そっちの方だけの特徴で、良いけど。 仕方がない。 傷、目立つんだもん。 知ってる子には、その印象が強いんだろう。 ジュースを取り出して、次の人に自動販売機を譲って、廊下の方にでると、丁度、さっきの二人組が何故か廊下の向こうからこっちに帰ってくるのが見える。 忘れ物でもしたのか、用事がすんだのか。 あ、なんか、ちょっと今、会ったら気まずいかも。 龍之介がそれを察したのか、すぐ近くの教室のドアを開けて、中を確認すると、「柚」と私を引っ張った。 空き教室。 ドア前に立ったまま、二人で、足音が過ぎ去るのを待った。 おしゃべりの声と、パタパタという足音が通りすぎる。
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