後夜祭

19/28
前へ
/177ページ
次へ
「別に俺らが、隠れる事、無いんだけど。なんとなく」 「うん。そのとおり。なんとなく」 くすっと笑った。 「龍之介、人気だね。噂されてる」 「昨日、好きな子がいるって全校生徒の前で言ったから。そりゃ、噂はされる、ね」 ハハっと私を見て言った。 『龍之介の彼女って、胸に火傷のある、あの子でしょう?』 そう言われているのかな? と思うと、ほんのちょっと、苦しい。 「龍之介」 「ん?」 「あのさ、気にならない? ……火傷跡」 なんとなく胸の上を擦る。 ここにある、傷。 一生消えない。 「んー。気にならないと思う。痛かっただろうな?とかは、思うかな」 心配するようにこっちを見ている。 うん。 でも、分からないよなぁ。 実際、どう思うかなんて。 血が駄目な人みたいに、傷跡を見てられないという人もいるだろうから。 龍之介がこの傷跡をどう思うのか気になる位は、もう好きになってしまっている。 今日一日で、もっと好きになっている気がする。 これからもっとこの人のことを好きになって、それで拒絶されたら、どうしていいか分からない。 どんな反応なのかなんて、実際、見なかったら、分からない。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加