後夜祭

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「柚、こっち」 龍之介に手を引かれて、校舎の中へ戻る。 文化祭最終日の今日、出入りの多い校舎はまだ施錠されていないらしい。 「どこ行くの?」 「花火、見えるとこ」 二階の端の校庭に面した窓を開けると、龍之介は窓枠にぽんと飛び乗ると向こう側に降りた。 「柚、こっち。降りといで」 窓枠の外は、一階の飛び出た部分の平らな屋根の上だ。 スカートに気をつけながら、よいしょっと窓枠から向こうへ降りた。 「龍、これ、私、帰り、上がれるかな?」 「抱っこしてやるから、大丈夫」 さすが授業をサボったりしているとだけあって、変な場所を知ってる。 屋根の上から、校庭がハッキリ見渡せた。 メラメラ燃える焚き火が見える。 野外ステージで、軽音部に変わってダンス部が何か披露している。 校庭と校舎のあちこちで、いろんな生徒が、歩いていたり、立ち話してるのが見えた。 「良くない? ここ」 「うん。校庭、よく見える!」 「たまに来るんだよね」 屋根の上に座り込んで、校庭を眺めた。 龍之介が隣にすわる。 なんか薄暗い中で隣に龍之介がいるのは、妙にドキドキする。 「龍。さっき、あんな事言って、サッカー部の人にからかわれなかった?」 「あー。うん。まあね」 後ろに手をついて、姿勢を崩しながら、へらっと笑った。
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