後夜祭

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「宣言しちゃった方が、はっきりして良いっしょ。俺が告白とかされたら、柚、ヤキモチ焼いて泣くから」 あ。 モテるって、言いたいのか⁉ 「あ、っそう。わざわざ、ありがとうございます」 嫌味たっぷりに返してあげる。 もう、泣いたりしないもん。 「どういたしまして!」 私の嫌味なんかもろともせず、こっちを見て、くすっと笑った。 もう。 あーあ。 この男にこうやってずっと誂われる運命なんだろうか。 眉間にシワが寄る。 「柚。俺、ようやく柚と付き合えて、相当浮かれてるから、許してよ」 浮かれてる、なんて、そんな顔で言われたら、ドキっとする。 ドギマギしてしまって、校庭に視線を移して返事する。 「うん。はい。あ、花火、始まった!」 「ん」 校庭の花火を見てるのに、隣の龍之介の方が気になってしょうがない。 二人でコンクリートの床に手をついて座りながら、数センチ先にあるだろう龍の手を意識しちゃって、心臓がさっきからずっと飛び跳ねている。 指先に龍之介の手が重なって、キュっとみぞおちが痛くなる。 ちょっと横の龍之介を見たら、花火じゃなくって私を見てた。 「龍?」 ギュッと手を握られたと思ったら、龍之介が身体をひねって顔を近づけた。 あ。 唇が優しく触れる。 校庭から花火の大きな音と歓声が聞こえる。 そっと唇を離すと、鼻先が触れる位置で、龍之介が少し笑う気配がした。
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