後夜祭

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「柚。俺、普通、こんなんじゃないから」 そう言って、私の腕の中で龍之介は目尻の涙を指先でもう一度、拭いた。 「知ってる」 知ってるよ。 いつもヘラヘラ、ちゃらんぽらんなくせに。 「ま、柚は知ってるか」 ハハハと笑うと、腕を広げて私を抱きしめ返すと、私のおでこに軽くキスした。 「はあ、ラッキー。柚にハグ出来た」 龍之介がいつもの調子でヘラヘラ笑ってる。 夏の夜の風に火薬と焚き火の匂いが混ざっている。 最後の花火が高く上がって消えた。 一瞬、こっちまで泣きそうになった。 あはは。 あなたが、私の胸の消えない傷も全部、好きだと言ってくれるように、 あなたが心に消えない傷を持っているのも、 ヘラヘラいい加減なのも、 全部ひっくるめて、 あなたが好きだ。 ー完ー
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