龍の傷

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 部活になるべく集中しようとしたけど、さっきから龍之介の小論文の内容が気になって仕方がない。 「柚ちゃん。今日、ちょっと、ぼーっとしてるね」 気がついたら、安藤先輩が斜め前で笑っている。 「あっ。すみません。考え事してました」 私の部長への片想いを知っている、みーたんが隣で、くすっと笑った。 「うん。柚ちゃんも図書委員もあるし、忙しいから、分かるけど」 遅れて来たのもバレている。 「すみません」 ぺこっと頭を下げた。 「いや、文化祭前、皆、それぞれ忙しくなるから。いいよ。じゃ、まぁ、柚ちゃん、今は俺に集中してください」 します! します! くすっと笑うと、私が上手に出来ていない指の動きを少し説明してくれた。 「柚ちゃん、手、小さいから、この辺持たないと4番届かないから、意識して、で、あ、固くなりすぎず……こう」 説明過程で、分かりやすいようにと、先輩が手に触るから、ドキドキしてしまう。 高校生活、部活が楽しいって、こういう意味じゃないはずだけど、すみません。 部活、楽しいです……。
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