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「柚、ちょっと原稿、手直しすんの、手伝って」
「え? 私?」
今日の現国の授業で、金子先生が小論文を返して、今年の参加者は龍之介になったとクラスに告げたら、クラスメートはざわめいた。
まさに私と同じ反応。
だれも龍之介がまともに小論文を書いたとは思ってなかった。その上、それがクラスで一番良いなんて。
「金子ちゃんが、もう赤入れてるから、それ参考にお前と直せって」
その時、龍之介に小論文を返して、金子先生は龍之介になにか言っていた。そういう指示なら仕方がない。
放課後の教室はまだおしゃべりしているクラスメートでざわついている。
皆が帰るのを待っていたら、何時になるか分からない。
「ん、ここうるさいし、図書館行く?」
「良いよ」
カバンを掴んで歩き出す龍之介の後を追うと、龍之介がちらっと私を振り返って、歩幅を狭めた。
「柚、おせえ」
「えぇ?」
基準が自分だからでしょ?
「足が短いから、しょうがねえな」
はははっと笑っている。
「ウルサイ」
事実だけども。
あんたはデリカシーがないわ。
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