龍の傷

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 文化祭まであと一ヶ月になって、もうそろそろ、本格的に合わせ練習が始まる。 一応、バイオリン2のグループで練習する分には、課題曲の3曲をまぁまぁ弾けるようになった。 他の楽器と合わせたときに、上手く弾くのが難しい。 ただただ黙々と、何回も何回も練習する。 ちょっとしたすきに見れる安藤先輩の姿が毎日の癒やしだ。 チェロを弾くのが、どうしようもなく素敵だ。 部活中におしゃべりできたら、さらに良い。 「柚ちゃん、ちょいD線低いから、確認して」 おしゃべりですらない、そんな調弦の注意でさえ嬉しい。 「はい。すみません」 今、すぐ、確認します、はい♡ こんな風に一緒に部活で顔を合わせられるのが、あと一か月しかないなんて、ちょっとどうしていいかわからない。
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