柚の傷

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水着を着ると少しだけ、左胸の上のやけどのあざが見える。 去年も同じメンバーで水泳をしたから、今年は、誰ももう聞いてこないだろうけど。 左胸の上に手くらいの大きさの痣。 小学校二年の時に、お留守番をしていて、電気ポットのお湯をこぼした。 大やけどして、大泣きして、その時の近所の人に助けてもらって、病院に運ばれて、しばらく入院した。 手当てが遅れたのもあって、痣になると言われて、両親が泣いた。 そして、私を一人にした責任を押し付けあって、半年後、離婚した。 母と二人暮らしになって、ますます私は一人になることが多くなったのだから、どういう論理だったのだろうか。 今になって思えば、離婚したのは、私のやけどが原因だけじゃなくって、色々大人の理由が他にあったのだろうけど、小さかった私は、私のせいで家族が壊れていったと思った。 水着では、痣の一部が見える程度だけど、すぐ気が付かれる程度には、見える。 聞かれたら、まるで気にしてない風に説明するけど、そりゃ、本当は、当たり前に気にしている。 ブラになったら、はっきりわかる。 脱いだら、悲惨。 せっかくのおっぱいが、残念。 ずっと、消えない。
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