柚の傷

6/32
前へ
/177ページ
次へ
***  土曜日、部活の練習は全体練習も多く、結構大変だった。 朝から、昼休憩をはさんで、ずっと弾いている。 昼休憩の時、校舎の端っこで、サッカー部がパネル材だと思われる木材シートを切っているのが見えた。うちのクラスのサッカー部のちゃんと活動してる部員の佐々木君とか、あっちゃんに混じって、龍之介もいる。 さっき、テニス部の甘夏ちゃんも、練習した後、午後はメニュー作りだと言っていた。 演劇部の子もステージ練習に出て来ていたし、軽音部のドラムとベースの音がずっと廊下に響いている。 高校全体が文化祭に向けて、活動している。 学校全体が、熱を帯びた様で、わくわくする。 昼休憩の後、4重奏をする先輩たちは、さっそく練習のために集まっている。 細川先輩と安藤先輩が楽しそうに話しているのが見えた。 安藤先輩の隣でバイオリンを弾く細川先輩はすらっとしていて、二人はとても似合う。 安藤先輩の元カノはオーケストラ部ではないけれど、細川先輩の友達のかわいい子だった。あの時、3年生の間で何があったのか知らないけれど、なんかややこしい雰囲気がする。 二人が笑っているのを見ると、なんか、お似合いだなとか思う反面、心の中は多少、複雑。 あんまり見ていると、お互い、どう思っているのかな?とか、色々想像してしまいそうになる。 私は、よそ見せずに、自分の譜面を見て、練習するだけでいい。 告白する勇気なんかないんだから、良い後輩でいればいい。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1106人が本棚に入れています
本棚に追加