柚の傷

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クシャクシャと私の髪の毛をいつもみたいに荒らした。 「もう良い?」 龍之介が立ち上がる。 「良いけど、帰るの? まだ部活?」 ジャージだから、まだ作業中なのかもしれない。 「ん、帰るわ。着替えてくるし、下駄箱で待ってて」 「あ、うん」 出ていった龍之介の後ろ姿を見ながら、もう一度ほっぺたを拭いた。 ああ、普通に泣いた。 そんでもって、なんで一緒に帰る事になったかなぁ。 良いけど。 バイオリンケースを持って、下駄箱で待っていると、すぐに龍之介はやってきた。 早く着替えたからか、シャツのボタン上2個も開いてる。 暑いし、別に良いけど。 「行こ」 歩きだす龍之介の隣に並んで歩きだす。 「うん。サッカー部、今日、何したの?」 校舎の端っこで、木材いじっていたのは見た。 「んー、恒例のペナルティキックのパネル作り。形だけ出来た」 「来週もする?」 「ペンキ塗る。あ、下絵は美術の子頼んでるらしいけど。塗んのは俺ら」 「何の絵?」 「よく分からん、市長が推してる、緑とピンクのカエルのやつ」 もう少しで駅だっていうとこで、小雨が降ってきた。天気予報は当たってた。 「あ、降ってきたぁ」 「バイオリン、持つわ。走るぞ」 そう言ってケースを掴むと走り出す。あわてて後を追いかけた。
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