柚の傷

17/32
前へ
/177ページ
次へ
***  バイオリンの自主練以外、残りの週末を全てテスト勉強で過ごした。文化祭気分の高くなるこの時期にテストをするなんて、酷だと思うのだけど、期末試験は避けられないらしい。 月曜、火曜、水曜と期末試験が続く。 後ろの席の龍之介も大人しくしている。夏休みの補修になるのは避けたいんだろう。 部活も月、火、水曜日の朝練までテスト休みになった。 安藤先輩に会えない日が続く。 廊下で会えないかなぁと思ったけど、そんな偶然すらなかった。 その代わり、テストはまぁまぁの出来だったと思う。金曜日には結果が帰ってくる。 「新井君。どうだった? 自信ある?」 「んー、まぁまぁ」 新井君は謙虚だ。まぁまぁとか言って、クラス一位をかっさらっていく。 「クリームパン、賭けようか?」 ふざけて賭けを申しでる。 学食で売っているクリームパン、バニラが効いてて、人気だ。 「何に?」 嫌だなって顔をするけど、メガネの奥が笑っている。 「総合順位。今回、イケてる気がするんだよー」 数学でこけて無ければ、結構いいはず。良い感じだったと思うんだけど。化学が一部、やばい気もするんだけど。クリームパン位のかけなら、楽しい。 「いいですけど」 お、新井君も自信ありか。くだらない賭けだけど、結果発表が重くならなくって良い。外してても、それなりに楽しいから。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加