柚の傷

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放課後、みーたんに選考会で部活に遅れると連絡して、龍之介を連れて、選考会へ向かう。 廊下を歩いていくと、D組の前で派手目な女の子二人に龍之介が声をかけられた。 「龍之介、選考会出るって、ほんと?」 「まじで?」 腕を掴まれて、聞かれている。 「んー、そうらしいよ」 そうらしいって、お前の事だろ!?  出るんだよ! へらへらしている龍之介にちょこっとむかつく。 いつもそう。 ふざけているけど、背が高いし、ふらふら具合が、ギャルっぽい子に人気だ。 「先行くから、絶対来てよ」 まだおしゃべりが続きそうなら、待っているのもなんか気まずいと思って、先に歩き出した。 視聴覚室はオケ部が使う音楽室に近い。 もう調音を始めている楽器の音がする。 音楽室前の廊下を歩きながら、いくつかの楽器の混じりあう音の中から、チェロの音を探す。 先輩、もう来ているかな。 歩きながら耳を済ませていたら、いきなりドンっと誰かに当たった。
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