柚の傷

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消毒して、傷テープを貼れるかやって見たものの、唇では無理だった。 消毒したら、まだ少し血が出て、またしばらくティッシュで抑える。 「ちょっと血が止まるまで、ここで待ってて。とまんないなら、病院行ったほうが良いから」 さっきから、血だらけ。 口って案外血が出るんだなぁ。 「あ、大丈夫? 貧血?」 先生がこっちを伺う。 「や、血がちょっと」 「ああ、びっくりしちゃった? ちょっと貧血っぽいから、ベットに頭上げて、座ろう」 丸椅子で倒れたら困ると思われたらしく、ベットに移動した。 血が止まるように、上半身を起こして座る。 先生がガーゼをそっと確認した。 「ん、止まった。けど、三十分くらい、ちょっとじっとしてて。貧血起こしそうだったから」 「はい。……先輩、良いですよ。部活、行って下さい」 「いや、俺のせいだし」 「ん。安藤君、ついてて。なんかあったら呼んで、職員室行くから」 そう言うと先生は、出ていってしまった。 「柚ちゃん、俺、喋っててもいいんだけど、口動かすと痛いでしょ? 寝てていいよ。俺、こっちに居るから。三十分経ったら声かける」 カーテンの外の椅子を指差して、困ったように笑った。 私のせいで、申し訳ない。 選考会にもいけない。 龍之介、ちゃんと出来たかな。 選ばれただろうか。
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