柚の傷

27/32
前へ
/177ページ
次へ
「ごめん」 気を遣ってくれたのと、選考会に行けなかったの。 両方。 もう一度謝ると、龍之介が少し、近くに来て、ベット脇に椅子を寄せて座った。 「良いけど。絆創膏どころじゃないじゃん。痛い? あ、もう喋らんでいいわ。首ふれよ」 ウン、と頷く。 「痛い?」 ウン 「選考会、通ったし」 ウン、ウン。 やった! やればできるじゃん。 「泣くなよ」 泣いてない! うんん、の横振り。 でも実は泣きそう。 ほっとした。 「ご褒美」 あ。 ああ。 あの、先輩に告ってこい、って言ってたやつ。 首を横に振る。 ムリだもん。 なんで意地悪、言うんだよ。 「告ってくるの無理なら、チュウ位で許してやろうと思ったのに、口、怪我してやんの」 え?  は? 何いってんの? 心臓が急にドキドキする。 びっくりしている私を横目に、龍之介は、「でこちゅーで許すかなぁ」と呟いた。 ウンも、イイエも言えないまま、びっくりしてたら、ふらっと龍之介が立ち上がって、近づいた。 「え!?」 一瞬で、おでこにチュウされた。 柔らかいのがおでこに触れた。 「龍!?」 この人、私のおでこにチュウした。 なんでもないって感じで、いきなり。 「あいつに告ってくるの、やなんだろ?」 「え、やだけど」 「じゃあ、しょうがねえだろ」 しょうがねえ? おでこにチュウして、しょうがねえ? どういう論理でしょうか。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加