柚の傷

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先生が棚からシミ抜きを出してくれて、白いシャツはなんとかシミにならなくて済んだ。 タオルでパンパンして乾かして、先生がドライヤーをかけたら、もう着れるようになった。 もう一度着替えて、龍之介のジャージを脱いだ。 「ありがと」 ジャージをこのまま返していいのか? 「ん。はい?」 一瞬着ただけだけど、洗って返した方がいいのか、それとも今日、龍之介がジャージがいるのか困った。 「洗おっか?」 ジャージを持ったまま訊いてみる。 「柚、もう帰る? 帰るなら、送るけど」 「部活、行く」 「まじで?」 バイオリンだもん。口を使うトランペットとか吹奏楽じゃない。 文化祭近いし、先輩にも心配かけたくない。 「じゃ、ジャージ、そのままでいい。俺、部活出てくるし、使うから」 私が頷くと、そういって、私の腕からジャージを取った。 「なんか、柚が着てた後って、エロいな」 ヘラっと笑っている。 バカ! 思いっきり叩いてやった。 でこちゅーされたり、優しい事言ってくれて、ちょっとドキッとしたけど、ダメだ。 アホだ、コイツ。
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