チェロとプール

9/32
前へ
/177ページ
次へ
もう数回通してパート練習をして、バイオリンを一旦下して、安藤先輩のチェロをちょっと耳を傾ける。 素敵な音。 私が聞いているのがバレたのか、安藤先輩も弓を下した。 「柚ちゃん、チェロ好き? さっきの子、チェロ始めたいっていう相談だったんだけど、柚ちゃんも、入部した時は、第一希望はチェロだったよね?」 私がチェロを希望した事、覚えていたのに少し驚いた。 「あ、はい。大きな楽器、弾けたら、かっこいいなとおもって」 新歓で、あなたの弾くチェロに惹かれた。 「はは、柚ちゃんみたいな小さい子が、チェロ弾いたら、それはかっこいいかも」 「バイオリンでてこずっているんですけどね」 バイオリンさえ、大きくって、手のひらから、指まで必死だ。手をグーパーさせた。 「弾いてみる?」 え? 「ほら、誰もいないし、教えるから」 そういって、安藤先輩はチェロを起こすと、椅子から立って、席を譲るように、すこし離れた。 先輩が本気で言っているようなので、バイオリンを置くと、先輩に近寄った。 心臓が飛び跳ねる。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加