チェロとプール

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「俺ら、今年もお化け屋敷だから来てよ」 剣道部の杉ちゃんがそう言うけど、去年、剣道部のお化け屋敷、おっそろしく怖かった。 「また闇黒?」 どうして、真っ昼間にこんなに暗くできるのかって言うくらい部屋を暗くする。毎年恒例で、剣道部、秘伝の技があるらしい。 「そう今年、空手とも合同で、二部屋続きでやるから」 「うわ、凄そう!」 「オモロ!」 去年、真っ暗な中に、どこから持ってきたのかという、立派な日本人形が何体も薄っすら闇に立っていて、腰が抜けそうになった。 「怖いんだよ、剣道部」 ザ、日本の怪談で狙って来るから、怖い。 文句のようになった私の感想に杉ちゃんがははっと笑って、「絶対、優勝狙ってるから、うちの部」と言った。 部費欲しさもあるけど、それぞれ、部活毎、色々工夫いっぱいにやっている。 委員会もスピーチ大会をやる図書委員だけじゃなく、美化委員は植木の手入れやゴミ箱設置してたし、放送委員もアナウンスと機材準備をやっている。 学校全体が湧く。 普段、地味な普通の進学校が、一番輝いてる時期だと思う。 地味な私の日常も、少し浮足立つ。
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