チェロとプール

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上がって行く水泳部に会釈して、プール脇に入ると、三年生の図書委員の先輩が練習を終えたとこらしく、金子先生と話している。龍之介はまだ来ていなかった。 倉庫脇に置かれた「図書委員」と書いたプラスチックの箱を掴むと、金子先生の方へ近寄った。 中のストップウォッチと、ラミネート加工された色付きのフリップと旗を出した。フリップは制限時間3分に合うように、2分、1分、30秒、十秒のサインになっている。 「こんにちは」 「おー、来たか。お前達で最後か」 「はい」 「んじゃ、失礼します!」と、私の前に練習していたらしい三年生達が上がる挨拶をしていくのを、「お疲れ様です」と会釈して見送ると、金子先生まで帰るような仕草をする。 「俺、職員会議だから。見てられないけど、お前、去年もやったから、分かってるだろ?」 「あ、ハイ、大丈夫です」 「んー、ヨロシク」 2年目だから、担任だからか、先生も少しユルイ。 良いけどさ。 龍と二人で練習か。
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