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始め、何にも弾けなかった私は、初心者のグループで、顧問の先生と、安藤先輩や細川先輩から、バイオリンの持ち方、弓の持ち方を教わった。
弦楽器へのあこがれと、安藤先輩へのあこがれという不純な動機で入部した私は、毎回、かなり緊張していた。
一度、安藤先輩に後ろに立たれて、バイオリンの構えを直されたことがある。
ちょっとした憧れ程度の気持ちでも、至近距離で後ろに立たれたら、ドキッとする。
後ろから、手を添えて、バイオリンの高さを直して、小さく笑ったのが分かった。
「柚ちゃん、小さいな」
呟くような、なんでもない一言で、私は恋に落ちた。
普段クラスの男子に「小さい」なんて言われたら、軽くにらんでいるところだ。
ただ、部長として、バイオリンのサイズを心配しての、「小さいな」だったのだけど、なんか、後ろで優しく笑ったのが、ツボに嵌まった。
それから、一年以上、片思いのままでいる。
彼女がいたとか、別れたとか。
それも通り越して、いまだに片思いしている。
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