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「もういい? 終わり?」
「待って!」
龍之介のとこへ行って、原稿にマークを入れながら説明する。
「ここで1分位だったから、ここらへんまでで一分で良いから。ゆっくり目で。ここで、2分だった。この辺まで良いから」
信じられないという風に私を見ている。
「本気か?細かいわ」
「そういうもんだから」
去年もそう。
皆、そう。
大会で上手にスラスラおしゃべりしてるって見えて、あれは努力の賜物だ。
「もう一回行くよ、声張って」
ジリジリと暑いプール際を端まで戻って、もう一度、と振り返ると龍之介はフェンス越しにE組の男の子らと喋っている。
話終えるまで、少し待っていると、龍之介がこっちを向いた。
「あぁ、悪い!」
水泳なら、プール脇が暑いのは良いけど、ここに制服で立ってるだけだと、梅雨明けしたこの時期、かなり暑い。
日傘、持ってくればよかった。
E組の男子が去って行くのを待って、もう一度スタートの合図を送った。
今度は、龍之介の声は良かったから、時間経過と、原稿にメモ書きするのに集中した。
「オッケー」
メモ書きを見直して、龍之介のとこへ歩きながら、整理する。
「ここ、もうちょいハッキリ、時間はそれでいい感じだけど。この段落後、一呼吸して」
説明しながら、龍之介の原稿に書き込んだ。
「はいはい、わかったから、もういい?」
「もうプール練習しなくていいから、あと一回やって……」
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