チェロとプール

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「んー。タイミング」 「何の?」 「C組の村松拓って知ってる? 」 知らない。 私が首を振ると「そうだろね」と言った。 私、あんまり他のクラスの子とか知らない。 「柚、他のヤツのこと、噂話とかしないから、知らないか」 「うーん、人とか、物覚え悪いから」 人に興味が無いわけではないけど、噂話は避けるし、本当に名前と顔を一致させるのが苦手。 「あのさー、この友達、健太が死んだ時、一緒にいたの、俺だけじゃなかったんだよね。」 「うん?」 「健太と、俺と拓と遊びに行ったんだよ。小学校の頃、同じクラスで。俺、3人の中で一番泳げたから、川の場所、結構深い方に行って、飛び込みしよって誘ってさ」 新聞にも友人達と遊びに行ったと書いてあったっけ。 「で、健太がいなくなって、溺れたんだって、探し回って、大騒ぎになって、後で見つかった訳だけど。 深い方に誘った俺のせいだとも思ったし、……今もそれは思ってるけど。まぁ、俺は、普通に暮らしてんじゃん」 普通かどうかは、分からない。 事故がなくても、チャラい、いい加減な男だったのか、もうちょい、落ち着いていたのか。そんな事は分からない。
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