チェロとプール

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結局、それ以上、龍之介は返事を求めることもせず、タオルを借してくれて、そのまま一緒に帰った。 土曜日の午後の車内で、隣に座る龍之介の存在自体に少し困った。 少しだけ触れそうな肩も足も、私と比べて、大きすぎて、男の子だと改めて意識してしまう。 「サッカー部の準備、進んでる?」 「んー、まぁ、進んでんじゃねえ?」 「他人事じゃん。いい加減だなぁ」 いつもと違う緊張が龍に伝わらないように、いつも通りの会話をした。 前の雨の日のように、家まで送ってくれるというのはさすがに遠慮して、電車で別れた。 「じゃあ、柚、月曜日」 「あ、うん。バイバイ」 私が手を振ると、軽く手を上げるだけのバイバイを返してくれた。
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