チェロとプール

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***  月曜の朝、なんか龍之介に会うのが気まずいと思ったけれど、奴は普通だった。 「ああ、眠い」 教室に入ってくるなり、大きなあくびをして、自分の腕を枕に机に突っ伏している。 「夜、遅かった?」 「んー」 私の質問に軽く目だけ開けて、返事した。 「何してたの?」 「拓とゲーム」 「あ。そうなんだ」 こないだ教えてくれた子か。一緒に遊んだりしてるんだ。 「つーか、月曜はねみいーし、暑い」 そう言うと、また目を瞑ってしまった龍之介の髪に窓から日が差して、少し茶色い彼の毛先を所々、透けた金色に光らせていた。 なんとなくその髪をいつも龍之介が私にするようにくしゃくしゃにしてやりたいと思った。 思わず指を伸ばしそうになって、慌てて、前を向いた。
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