前夜祭

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前夜祭

 金曜日は、全校、文化祭準備の一日になって、夜は前夜祭だ。 体育館のステージは、最終リハの時間割が張り出されて、三十分後毎に朝からスケジュールが埋まっている。 図書委員は、10時から、二枠で、一時間。 オーケストラ部は、二時半から、二枠で一時間。 ホームルームの開始ギリギリに龍之介が登校してほっとした。 担任の金子先生が教室に入る。 「文化祭準備だけども、部活、委員、それぞれ、きちんとやる事。前夜祭が四時から、ステージであるけども、明日から本番なんだから、ハメ外しすぎないようにしろよ」 そんな注意事項だけ言って、ホームルームが終わった。 がやがやとみんな動き出す。 暇な人は教室でおしゃべりしたり、自習で良いことになっている。 私も10時からのスピーチ練習まで暇だから、音楽室へ行こうかと立ち上がった。 ホームルームだけ出て、さっさと家に帰ろうとしているような新井くんを見つけた。 「新井くん、帰宅部、何するの?」 部活をやってない生徒にも何かしら役割がある。そうでもしないと文化祭中、学校に来ない子もいるから。 「2年は、来客対応だって。PTAとか来賓にお茶出し。去年は駐車場整備だった」 炎天下の駐車場整備より、お茶出しの方が随分格が上だ。 「良かったね。お茶出しの方が随分いいじゃん」 「うん。まあね」 「ん。じゃあね。明日!」 「柚、10時に体育館?」 振り返ると龍之介が立っている。 「うん。原稿持ってきて。通しやるから」 「分かった。部室に居るわ」 「ん。了解!」
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