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「ごめんね。大好きだよ」
彼女の瞳から涙がひとすじ流れ落ちた。彼女は僕からペーパーナイフを取り上げると自分の首を一気に切り裂いた。
「ぐぅっ」
彼女の奥から漏れる呻き声。首から溢れ出す深紅の悲鳴は彼女と僕とあの女を真っ赤に、真っ黒に染めていく。
崩れ落ちる彼女を抱きとめる。薄れゆく意識の中で彼女は僕だけを見つめていた。弱々しく彼女が笑った。言葉にならない僕の心が腹の底から湧いてきて喉を突き破り外に出る。まだ彼女の手に握られていたペーパーナイフを、彼女の手ごともう一度自分の首に押し当てた。今度は躊躇なく滑らせる。内なるものが溢れ出し彼女を僕が染めていく。
こうして彼女は僕のものに、僕は彼女のものになった。
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