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「えっと……どうかしたのか?」
ラルは苦笑いを浮かべた。
するとリンネは、艶やかな自らの銀髪に指先を絡めながら言うのだ。
「本当に心配になる。ラルはきっと、利用されるだけ利用されて、最後はやってもいない罪を押し付けられて捕まって処刑される。死体はきっと、川に捨てられて魚の餌」
「いや、ちょっと待て。何だ、その不吉な予言は」
「──嘘」
「は?」
「さっき私が言ってた事、嘘」
「俺が最後魚の餌になるって話か?」
「あ、それは現実になると思う」
「おい……!」
ラルが頬を引き攣らせると、リンネは一度視線を切った。
そこから転じて数センチの笑顔を浮かべる。
相手に。
分かるか分からないか。
伝わるか伝わらないか。
気のせいである可能性を否定出来ない程度の。
小さな小さな。
そんな笑顔。
「嘘って言ったのは、荷物の見当が付かないって所。本当は有る。正門から一番近い宿に預けて有ると思う」
「何故、そんな嘘を?」
「そう言えば、ラルが呆れて私から離れると思ったから。深く関わって、貴方が辛くなる前に」
「ますます意味が分からないな」
「──直ぐに分かる。あと、三週間程度だから」
的を得ない様子のラル。
だが正門近くの宿屋へリンネが向かうと、それ以上何も聞かずに同行してくれた。
この人は本当に御人好しだ。
本当に良い人だ。
心配になるくらい。
私と違って、良い人。
だから少し、貴方に心を許してしまった。
きっと私はまだ、誰かを必要としていたのだと思う。
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